☆春 砂鉄川の清流がぬるむ。アユやコイが川面にはね、渓谷をわたる風が頬にやさしい春の訪れ。やがて、新緑におおわれた絶壁に穂をさげる藤の花。淡い紫色がひときわ可憐で美しい。☆夏 両岸の木々がいよいよ緑を増し、蒼く染まるげいびの流れ。おおいかぶさるような木々の下を小舟で行けば、ひんやりとした涼風が心地よい。夕暮れになると、ヒグラシの声が峡谷にこだまする。☆秋 みちのくの夏は短く、げいびにもはや秋がやってくる。峡谷が色づきだし、そして豪華絢爛な錦の屏風となる。とりわけもみじが美しく、あちことから聞こえる河鹿の鳴き声が旅情をかきたてる☆冬 訪れる人もまばらな峡谷は水鳥たちの天国。岩壁の松が雪を戴き、さながら水墨画の世界を見るようだ。屋形舟に雪見酒としゃれ、冬を味わう。静寂に冴え渡る船頭さんのげいび追分が心に懐かしい。 |